埼玉協同病院

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専門医シリーズ9

地域の医師はおもしろい

専門医シリーズ 9

関口 由希公

プロフィール●

2000年群馬大学卒業。協同病院で2年間の研修後2002年から熊谷生協病院で半年、秩父生協病院で2年の研修を終えて、協同病院で7年間にわたって研修指導。その間、内科専門医、糖尿病専門医、日本プライマリ・ケア学会認定医・認定指導医取得。さいたま総合診療医・家庭医センター長(SGFAM)

学生時代から様々な社会問題にかかわり、地域医療をめざし埼玉協同病院に入職。地域拠点病院での経験後、埼玉協同病院で研修医の指導に携わり、現在は診療所所長として地域医療の最前線で診療にあたられている関口由希公医師に、これまでの経験や診療所の所長としての思いをお聞きしました。

埼玉協同病院との出会い

関口医師が埼玉協同病院を知るのは、県庁勤めの父が医療生協さいたまの職員と知り合いで、「いい医療やってるから、ちょっと見学に行ってみなよ」と言われたことからです。「毎月奨学金をいただけて、一定期間協同病院で勤務すれば返済を免除してくれるし、外部の病院に専門の研修に出してもらえると聞いて、契約しちゃったんですよね」と笑います。
大学時代は、医系学生が自主的に学び交流する「医ゼミ」で、国立病院の統廃合を「仕方がない」という医師と「この患者さんはどうなるんですか」と問う看護師たちの考え方の違いに考えさせられました。 学友会(自治会)会長の時には、卒後臨床研修制度の義務化が問題になり、研修の内容や、研修医の身分保障のことなど学生みんなで自分たちの研修をつくる意気込みで議論しました。関口医師はこうした中で、自分の基礎を固めていったと感じています。

勉強になった秩父の2年間

協同病院の2年の初期研修後、半年間は熊谷生協病院。その後、秩父生協病院での研修を行います。秩父での経験は特に心に残っていると話します。
「がんの終末期の患者さんが「食べられない」「動けない」というので臨時で往診に行きました。こんなに具合が悪かったら入院です、と言おうとしましたが、ご家族が『これでいいんです』って。病院で亡くなる人ばかり見ていたので、みんな号泣している中で、自宅で家族に見守られて最期を迎えるのも幸せなのかなって思いました。今までで一番印象に残っている患者さんです」26~27歳のころでした。
もっと驚いたのは「逆に僕が感謝されたんですよ。ありがとうございましたって。まさか、亡くなっちゃったのに。それも自宅で」。
結局、秩父は半年の予定が2年になりました。

「何でこんなこと」

関口医師が研修医の1年目か2年目の時、がんの末期で病院で亡くなる1週間ぐらい前に、「本人と家族が家に帰りたがってるから、ちょっとの間でもいいから、一緒に帰ってきて」と指導医に言われました。息が止まりそうな人を大宮の新都心まで車で連れて行きました。正直「何でこんなことさせられるのかな」と思ったことがあります。
今なら「本人が望んで、家族が納得していれば自宅に連れて帰ってあげよう」と思える。関口医師は、研修医たちにもそういう、治すこと以外の経験も大事にしてほしいと言います。

患者さんに学ぶ。患者さんを知る。

医療生協さいたまでは、よく「患者から学ぶ」という言い方をします。患者さんの症状はとても参考になります。狭心症で来た人には、どんな痛みだったか、胸がこうやって締め付けられて、肩が痛くてとか症状を事細かに聞きます。そうすれば他の患者さんにもこういう症状があるのかや、大体こういう経過で良くなると具体的にアドバイスできます。「患者さんに学んで患者さんに返す」関口医師は患者さんは教科書だと言います。
診療所では、患者さんや家族のことは職員に聞くと誰かが知っています。患者さんのために同じ方向を向いてるので、この患者さんをどうしたらいいかとすぐ相談できます。「歩んだ人生や、今後の希望がわかれば、より患者さんの希望に添えるし、患者さんの満足度につながります。こちらもやっいて楽しい」と言う関口医師は、救急で診た患者さんとか、在宅で看とった患者さんの名前、調べたいこと、気になる患者さんリストなど「ログ」と呼ばれるものを毎日手帳に残しています。

居場所

関口医師は、診療所は、医師の人気ももちろん、看護師さんや診療所の雰囲気であったり、何でも話しやすくて、相談に乗ってくれる総合力が必要だと考えています。認知症カフェや子ども食堂みたいなことで、もっと診療所を使ってもらえる居場所にしたいとも。
本来、自宅で看取るのは本人やその家族の意思です。今、包括ケアで「在宅」が叫ばれ、国の制度では年間に自宅で看取った件数で診療報酬に差がつけられてしまう。誰でも彼でも在宅で頑張ることがいいことのような、最期の迎え方を国がきめてしまうことに関口医師は危惧を持っています。

診療所の治療中断患者

療所の所長になったのが2012年です。関口医師が最近感じているのは、若い働き盛りの患者さんに治療の中断が多いことです。追ってみると保険料や窓口負担が払えないなどほとんどはお金が関係しています。「仕事が忙しい」とか言われますが、結局そこに結び付きます。お金の問題は解決が難しいですが、だからこそ診療所では、無料低額診療制度を利用したり、中断対策チームでフォローを強めています。
「病院の時には、どちらかと言うと病気を取り除きたくさんの患者さんの命を助けることが重要な役割で、生物医学的なところに視点が行きがちでした。診療所は患者さんと家族の生活を支える感じです。継続して診ていて、患者さんや家族に近いのがすごく好きです。でもこれは役割の違いですから」。