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専門医シリーズ26

臨床検査、病理、 内科・感染症の 視点から 病気を見つけます

専門医シリーズ 26

砂川 恵伸 医師

プロフィール●

1994年、琉球大学医学部卒業。沖縄県立中部病院で初期研修し、内科医として離島勤務後、国立国際医療センター・エイズ治療研究開発センターでエイズ診療。その後日本大学などで病理・ 臨床検査医として勤務。2020年より埼玉協同病院に入職。臨床検査専門医、病理専門医・指導医、細胞診専門医、総合内科専門医、感染症専門医・指導医、ICD、医学博士。国立感染症研究所感染病理部研究員。

ヒトの体から採取した組織や血液などを観察・分析し、最終的な診断を下す臨床検査と病理検査。さらに砂川医師は内科と感染症専門医としても診療を行うドクターです。それらの知識と経験から病気を総合的に判断し、より質の高い医療の提供に努めています。

医学部時代と初期研修で感染症に興味を持つ

私たち人間は、さまざまな微生物と共存しながら生きています。中には深刻な感染症を引き起こす病原体もあります。そうした病気を診療する砂川医師の原点は医学部時代と初期研修病院でした。
「医師を志したきっかけは、病気で苦労した家族の姿を見て育ったことです。私が学んだ琉球大学医学部は、”南に開かれた国際性が特色で、感染症をはじめとする熱帯地域の医療を目指す”、を目標に掲げています。その頃アジアの医学生たちと交流を深める機会もあり、感染症に興味を持ちました」
大学卒業後、砂川医師が目指していたのは総合診療・内科(感染症)でした。
「初期研修をした沖縄県立中部病院(以下、中部病院)では、米国感染症専門医資格をもつ喜舎場朝和先生をはじめ教育熱心な多くの医師に指導を受けました」
中部病院は全科ローテーションの救急・総合病院として、国内・国外へ多数の医師を送り出しています。医師としての基本を中部病院で学び、初期研修終了後、宮古島等で勤務しました。離島では救急医療・内科(感染症)をはじめさまざまな患者さんの診療を担当しました。

刻一刻と変化する微生物とヒトとの戦い

「感染症診療はしばしば迅速な対応が必要です。感染症診療は、正確かつ迅速に病原体を診断し治療開始できるか否かが重要です」
大量の細菌が血管内を経て全身に回る敗血症。発熱が唯一の症状のこともあり、その診断には血液培養という検査法を用います。患者さんから血液を採取し、培養液で菌を増やして診断するまでに1~3日間かかります。血液培養陽性が判明すると、砂川医師は細菌検査室の技師さんと協力して顕微鏡で菌の形・色の“見た目”で菌名を推定します。その後さらに菌名を確定し、最適な抗生物質の候補が分かるまで2~3日間が必要です。
「胆のう、腎臓といった内臓に炎症が起こって菌が血液に漏れ出て全身を回ることもあれば、細菌性心内膜炎のように菌が心臓内側への直接の付着が原因となることがあります。菌は種類が多く、またそれぞれの菌で最も効果のある抗生物質はある程度決まっています。菌を顕微鏡で観察して、開始された抗生物質のままでよいか、修正が必要か判断します」
埼玉協同病院では年間約3,500件の血液培養が各科から採取・提出されています。そのうち血液培養が陽性となるのは約1割、350件です。砂川医師は検出されたすべての菌を顕微鏡で観察し、各主治医に情報提供しています。
「臨床診断がついても、それをより確実に判定するのが病理・検査の利点であり、その情報を患者さんと主治医に提供するのが私の役割と考えます。私は直接患者さんにお会いしませんが、チーム医療の一員として取り組んでいます。私一人では達成が難しいことを他職種の助けを借りて、より良い医療の提供に努めています。現在のスタッフに支えられて医療が実践できていると感じます」
患者さんと直接会う機会がなくても、チームの一員として取り組むのはなぜでしょうか。
「私の恩師に”常に主治医感を持って患者さんに接するように”と教えられました。お世話になった先輩・指導医の教えに少しでも近づけるように努力しています。」

エイズリンパ腫を診療して、病理の勉強が必要と痛感した

砂川医師は離島勤務後、東京の国立国際医療センター・エイズ治療研究開発センターに異動しました。エイズは免疫が低下し、体内に潜伏したウイルスなどが原因で肺炎や悪性腫瘍(がんやリンパ腫)を発症する病気です。当時、悪性腫瘍を的確に診断する病理に興味を持ちました。
「実を言うと病理は学生時代に苦手でした。しかし臨床で感染症と対極にある悪性腫瘍診療に行き詰まりを感じ、そこで病理を勉強し、感染症と悪性腫瘍いずれも診療できる医師を目指しました。中部病院の先輩の紹介で日本大学病理学へ進みました。」
病理へ異動当初は2~3年で臨床へ戻るつもりでしたが、次第に診断スキルとしての病理の重要性を再認識しました。予定していた年数はあっと言う間に過ぎて、その後病理専門医資格を、さらに感染症診療にも役立つ臨床検査専門医の資格も得ました。大学で研究にも携わっており、感染症の病理で有名な国立感染症研究所感染病理部と交流ができ、今も診断・研究を続けています。

患者さんの所見を観察することは病理・臨床検査の診断に基づいている

これまでの知識と経験を活かせる場として埼玉協同病院に入職しました。砂川医師は週1回(水曜)内科急患外来を担当し、また同僚医師からの相談があると直接病棟で患者さんを診察しています。
「患者さんに会った瞬間から、表情や動きを観察することは、顕微鏡で見える小さな腫瘍細胞を見逃さないように努める病理診断に似ています。病理は、ヒトの組織検体を採取し薄く切って作製したスライドガラス標本を顕微鏡で観察します。ヒトの組織を観るのが病理、菌(病原体)を観るのが臨床検査・感染症です。患者さんの身体所見、レントゲンやCT画像などを見ていると、顕微鏡のイメージが浮かびます。問診・診察といった臨床と、病理・臨床検査の情報を加味して総合的に診療にあたっています。」
臨床と病理・検査を行き来して、チーム医療で取り組み、より良い医療を提供できるようにすることが砂川医師の理想です。自身の経験をもとに、書籍「正常と異常が一目でわかる 総合診療のための病理診断ケーススタディ」も出版しました。
最後に新型コロナウイルス感染症について質問してみると「すべての感染症において、薬による治療やワクチン接種をしても100%効果があるとは言い切れません。特にウイルス性疾患は特効薬が少ないので、“予防が第一”です。」いま一度、気を引き締めて感染防止対策を実践することを強調していました。