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埼玉協同病院 年報 2014年 VOL.27(通巻第29号)
床工学技士の業務ではないため、ABI、SPP
は看護師の役割となっており、臨床工学技士はP
AODへの早期発見や早期治療には関与できてい
ない現状があった。看護師は患者が透析中にフッ
トケアも行っているため、SPPを測定するにあ
たり臨床工学技士が介助に入ったところ、短時間
で正確に測定することができた。そこで、本稿で
は臨床工学技士がPAODの早期発見、早期治療
に果たす役割について考察する。
2.目的
本研究は、当院のPAODに対するSPPの評
価を行い、PAODのスクリーニング検査として
ABIだけでなくSPPでも可能であることを検
証することを目的とする。また、PAOD管理の
フローシート作成を通して、臨床工学技士の役割
を明らかにする。
3.方法
(1)対象
2014年度の外来維持透析患者54名中、糖尿病
25名(男性16名、女性9名、平均年齢67.0±
11.6歳、平均透析歴6.8±5.8年)の50肢を対
象とした。
(2)調査期間
2014年4月30日~5月31日
(3)データ収集・分析方法
①ABI、SPP測定・分析
仰臥位をとらせ、ABIは両手首と両足首、
キーワード:PAOD SPP 臨床工学技士
1.はじめに
透析患者は潰瘍・壊死を呈する重症虚血肢を
伴った末梢動脈閉塞性疾患(peripheral arterial
occlusive disease:PAOD)を合併する確率が
高い
1)
。PAODは早期発見・早期治療が必要と
されるため、当院ではPAODの診断指標として、
2006年より足関節上腕血圧比(Ankle Brachial
Pressure Index:ABI)の測定を年1回行って
いる。2014年にはPAODにおけるABIの有効
性を発表した
2)
。しかし、透析患者へのABIは、
血管石灰化の影響を受けやすくABI値が異常高
値を示すことから、PAOD評価としては注意が
必要とされている
3)
。皮膚毛細血管還流圧(Skin
perfusion pressure:SPP)は血管石灰化の影響
を受けず、透析患者のPAOD診断に有用との報
告がある
4)
。
当院でもSPPを測定する機会を得たため、今
回、ABIとの比較によりSPPの評価を試みた。
臨床工学技士は、医師の指示の下に、生命維持
管理装置の操作(生命維持管理装置の先端部の身
体への接続、または身体からの除去であって政令
で定めるものを含む)及び保守点検を行う(臨床
工学技士法第二条)ことを業務とする。透析室で
は、PAOD患者に対してアフェレーシス療法(血
液と血漿を分離し、その血漿の中から疾患の原因
となる物質を取り除く血液浄化療法)の機械の操
作を行っている。しかし、診断のための検査は臨
末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)に対する皮膚毛細
血管還流圧(SPP)評価と臨床工学技士の役割
埼玉協同病院 臨床工学技士
1)
透析室看護師
2)
○原島貴彦
1)
高橋千賀
2)
熊谷大樹
1)
木村貴史
1)
丸岡早紀
1)
篠塚陽子
1)
吉川雪子
1)