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埼玉協同病院 年報 2014年 VOL.27(通巻第29号)

る。
 SPPのカットオフ値をSPP<50 ㎜Hgから
SPP<40 ㎜Hgにすると、特異度は100%に
なるが感度は下がるため、SPPが陰性であって
も事象の発生ありの人が含まれる割合が多くなる。
SPP<70 ㎜Hgにすると、感度は上がるが特異
度は下がるため、SPPが陽性であっても事象の
発生なしの人が含まれる割合が多くなり、PAO
Dの確定診断は難しくなる。カットオフ値SPP
<50㎜Hgのオッズ比は高かったが、SPP<50
㎜Hgの妥当性については、症例を増やして検討
する必要がある。
 検査実施上の問題として、ABIでは両手首と
両足首の締め付けによる痛みを訴えて途中で拒否
する患者がいる。しかし、SPPは両足底への圧
迫は強い刺激になりにくいため、ABIの測定が
困難な患者にも使用できる。
 以上のことから、ABI、SPPの両方を用い
ることでより詳しいPAODの評価ができると考
える。

(2)PAOD管理における臨床工学技士の役割

 PAODフローシートを作成したことにより、
各スタッフの役割が明確となった。臨床工学技士
については、ダイアライザーの検討やLDLアフェ
レーシスなどの治療を検討する際の専門的な情報
提供や実施という位置付けが明確になった。
 また、SPPの測定介助やデータ管理などの新
たな役割を果たすことにより、他のスタッフと協
働してPAOD患者の早期発見、早期治療のため
のトータル管理を担うことが可能になった。

6.結語
 今回の調査から、ABI、SPPを測定するこ
とで、より詳しいPAODの評価ができることが
検証された。しかし、Fontaine分類Ⅲ、Ⅳに該当
する患者がいなかったため、症例を増やして検討
していく必要がある。また、PAOD管理に関す

PPが陰性であれば、まだ末梢毛細血管の循環不
全は起こっていないと推測される。ABIの結果
にかかわらずSPPが陽性だった場合は、PAO
Dのリスクが高いと評価できる。今回は4人7肢
にPAODのリスクが確認された。ガイドライン
ではABI<0.9を陽性とした場合の血液透析患
者のPAOD罹患率は16.6~16.7%としており、
今回の調査によりPAODが疑われた患者の割合
16%(25人中4人)はガイドラインに近い値であ
り、調査対象は妥当であった。
 Fontaine分類別のABI、SPPの平均値の比
較から、いずれもFontaine分類Ⅱの症状がある人
で有意に低値であったことから、症状の有無に一
致した結果であった。分割表およびオッズ比から
も、Fontaine分類による症状の有無とABI、S
PPの判定には有意な関係性が見られ、ABIお
よびSPPをPAODのリスク評価に用いること
は適当と言える。また、Fontaine分類別のABI
とSPPには正の相関が見られ、両測定の傾向は
一致していた。
 ガイドラインでは、ABI<0.9をカットオ
フ値とした感度は29.9%、特異度は100%であ
り、今回のABI≦0.9での感度68.8%、特異度
85.3%は良好な結果であった。ABI≦1.0をカッ
トオフ値にすると、検査が陰性の場合は正しく
Fontaine分類Ⅰに分類される割合が増えるが、P
AODの診断に用いるためには現在の基準のほう
が適していると言える。オッズ比からもABIの
陽性とFontaine分類Ⅱの関連性が示された。
 SPPは、カットオフ値SPP<50㎜Hgでは
感度31.3%、特異度97.1%であったが、ガイドラ
インの感度78.6%、特異度は91.6%に比較し、感
度が低かった。ガイドラインでは下肢造影で動脈
の狭窄を確認してPAODを診断しているが、本
調査で事象の発生に用いたFontaine分類は自覚症
状による分類である。そのため、Fontaine分類Ⅱ
にはPAOD以外の原因による事象が含まれ、S
PPでは陰性となった患者が多かった可能性があ