機能評価診療実績

診療実績 2018年

埼玉協同病院では、2005年から300項目以上の医療指標を設定して、医療水準・質の面での改善課題や引き上げ目標を明確にして取り組んでいます。医療指標は臨床指標、病院指標などとも呼ばれ(QI、CIなどと表されることもある)るもので、医療の質を定量的に評価する指標のことです。医療の質の良否を客観的に測ることのできる「ものさし」にあたります。ある医療行為などを行った全対象を分母として、得られた「望ましい結果(望ましくない結果)」やそのプロセスの適切さの程度を「比率で表す」という特徴があります。そうすることで、他の施設や社会の標準と比較することができます。

1.患者満足度(外来)

クリニカルインディケーター(QI)とは、医療の質を定量的に評価する指標のことで、医療の質の良否を客観的に測ることのできる「ものさし」にあたります。
患者満足度は、医療提供の結果を測る代表的な指標の1つで、患者の期待水準との差を示しています。
以下は2018年10月3、4日の2日間に外来患者に行ったアンケート結果です。(回答者848名 回答率84.8%)

『とてもそう思う』『ややそう思う』と回答された方をみると、「(1)受付や会計係は声をかけやすく、疑問に対応してくれた」や「(2)治療方針など医師から受けた説明は十分だった」、「(4)職員は礼儀正しく経緯をもって対応してくれた」という質問の満足度が高い結果でした。一方、「(7)生活習慣を改善する為の具体的なアドバイスを受けられた」という質問の満足度は低い結果となっています。

待ち時間を改善して欲しいところに関しては、「診察」までが最も多く、次は「なし」という結果でした。
診察を待つ間に職員から苦痛を気遣う声かけなどの配慮があったかについては、「苦痛を気遣う声かけなどがあり苦痛軽減できた」と答えた方が10%いた一方、「苦痛を気遣う声かけはなく苦痛だった」という方が5%おり、まだまだ改善の余地があると思われます。

医療費の心配について職員に相談することができたかという質問に関しては、「相談できた」方が18%いた一方、6%の方が「誰に相談してよいかわからなかった」という回答でした。
当院には、安心して医療を受けて頂くため、医療費の支払いの心配はもちろん、介護保険の申請、治療や検査内容などの疑問・不安などについて、患者さんと一緒に考え、解決のお手伝いをさせていただく、専門の社会福祉士がおります。C館1階の『総合サポートセンター』で、対応しておりますので、お気軽にお声かけ下さい。受付・予約などは特に必要ありません。

今回の満足度調査において、良い評価をいただけた点についてはより良くなるように、また、あまり良くない評価をいただいた点については改善を進めていきたいと考えております。今後も患者さんの痛みや不安に寄り添った医療を提供し続けられるよう努力していきます。
また、埼玉協同病院には患者・利用者さんからのご意見やご要望を寄せて頂く「虹の箱」があります。より良い医療の実現のため、ご意見・ご要望等がありましたら、ぜひご投稿頂ければと思います。

2.身体抑制

身体抑制とは、道具(ベッド柵やミトン、ベルトなど)を用いて一時的に患者の身体を拘束し、その行動を制限することをいいます。病院では治療を受ける患者の安全を確保する必要があるため、行動制限を行わないと転倒や点滴・カテーテルを抜いてしまうなど、患者の生命または身体が危険にさらされる可能性が高い場合や、行動制限以外に患者の安全を確保する方法がない場合に、やむを得ず同意を得て一時的に身体抑制を行う場合があります。
下のグラフは入院患者に対する2014年から2018年までの身体抑制割合および身体抑制の解除・軽減のための検討頻度を表したものです。

身体抑制を行っている場合は、身体抑制を外せないか、抑制している時間を短くできないか、より行動制限の緩やかな方法がないかなどの検討を毎日行っています。2018年は身体抑制せざるを得ない状況を減らすため、特に力を入れて取り組んだ結果、身体抑制割合が大きく減少しています。(検討頻度は2015年から測定開始)

当院では全職種向けの学習会や認知症ケアチームによる回診など、抑制しないための取り組みを進めています。患者の変化にすぐに気付けるようスタッフステーションに近い部屋で過ごしていただくようにしたり、患者の訴えから不安や苦痛の評価を行い、安心できるような声かけを行ったり、その人に合った対策を考え対応しています。

回復期リハビリテーション病棟では、身体や認知の機能が低下し転倒する危険性の高い方に対して、ベルトなどの身体拘束具をなるべく使用しないために、車椅子から立ち上がったことを知らせる座面センサーを導入しています。また、立ち上がってしまったとしても、車椅子が動いたりしないよう自動ブレーキがかかる車椅子を一部の方に利用しています。他にもトイレに行きたくなるタイミングを患者ごとに観察して、そのタイミングでスタッフが一緒にトイレに誘導するといったことを行っており、患者の行動を「抑制する」のではなく、「安全に行えるよう」に日々取り組んでいます。
また、転倒もしくはベッドからの落下等が起きた場合には、職員だけでなく患者と一緒に転倒が起きた場所で、予防対策を共に考え、実行しています。

過度な身体抑制はより重大な事故に繋がることがあり、また人としての尊厳を傷つけるものでもあります。患者家族の皆様には、患者が慣れ親しんだ衣類や日用品、写真などご持参いただいたり、普段の生活リズムや習慣などを職員に伝えていただくなど、ご協力をお願い致します。医療者と患者家族が協力することで、患者が安心して過ごすことができる療養環境を共に整えて行きたいと考えています。今後も患者の安全を守りつつ、病院全体で抑制ゼロを目指していきます。

3.救急搬入数・受入率

救急搬入数はどのくらい救急車を受け入れたかを表す指標で、2018年は約4300台と1日平均12台の受入を行っており、ここ5年間で約1000台近く数を増やしています。2017年9月には2016年度に救急搬送受入件数を大幅に改善した功労者として、埼玉県から表彰を受けています。
救急受入率は、救急隊からの搬送の要請に対して、どれだけの救急車の受入ができたかを示すもので、地域医療への貢献を表しています。

当院は救急医療・がん医療を軸に急性期病院としての医療機能と質を高めることに力をいれています。
地域の皆様に安心・安全の医療を提供し続ける為にも、もっと救急車の受入を行えるような救急医療体制の整備を進めていきたいと考えています。

4.患者満足度(入院)

患者満足度は、医療提供の結果を測る代表的な指標の1つで、患者の期待水準との差を示しています。
以下は2018年10月1日から31日に退院した患者に行ったアンケート結果の一部になります。(回答者468名)

「入院の原因となった診断や治療方針について、医師から受けた説明は十分でしたか」という質問に対して、『とてもそう思う』『ややそう思う』と回答された方は96.1%と高い数値でした。
一方で「診断や治療方針について、医師の説明を受けた際の疑問や意見は、医師に伝えられましたか」という質問においては、『あまり伝えられなかった』『伝えられなかった』『何を聞いて良いかわからなかった』と回答された方が5.8%おり、疑問や意見をうまく伝えられていない方が一定数いることがわかりました。
医療は、患者と医療従事者が互いに人間としての尊厳を尊重しあい、信頼に基づく協同関係によって成り立つものであり、療養の主体者は患者です。療養の主体者であるということは、どうしたいかを自分で決め(自己決定)、医療の専門家の助けを得て治療を進め、また健康をつくっていくということです。
埼玉協同病院では、自己決定を支援するためのツールとして、「マイかるて」「患者メモ」「私の優先したいこと」を用意し、その利用を勧めています。
これらのツールを使うことで、より自分の疑問や意見を医療従事者へ伝えることができるようになり、より良い医療を受けることに繋がるため、是非ご活用ください。

病棟ではナースコールが押されると、スタッフステーションに連絡がいき、看護師が対応を行っています。「助けが必要でナースコールを押した後、あなたへのケアは行われましたか」という質問に対して、『すぐに来てケアが行われた』と回答した方は68.4%おり、『押す必要がなかった』『無回答』を除くと93%はすぐにケアが行われているという結果になっています。

食事は入院生活の楽しみでもあり、栄養管理の基本でもあります。「食事は全部食べられましたか」の質問に関しては、73.5%の方がだいたい食べられたと回答しています。
「栄養士または調理士から、食べられるためのアドバイスが受けられましたか」の質問に関しては、『アドバイスは受けたがあまり変わらなかった』『相談する機会がなかった』との回答が26%あり、今後の課題です。

職員の接遇、案内に関する質問に関しては概ね高い満足度となっています。今後も安心・安全な入院生活を過ごして頂けるよう、丁寧な接遇、説明を行っていきます。

「全体として当院の診療に満足していますか」という質問に対して、『とても満足』『やや満足』と回答した方は94%と高い満足度でした。また、「当院を知り合いに紹介したいと思いますか」という質問に対しても、『とても満足』『やや満足』と回答した方は92.3%と高い満足度でした。
今回の満足度調査において、良い評価をいただけた点についてはより良くなるように、また、あまり良くない評価をいただいた点については改善を進めていきたいと考えています。ご意見・ご要望等ございましたら、ぜひ院内にある虹の箱にご投函下さい。地域の皆様が安心して医療を受けることができ、満足いただける病院となるよう今後も努力していきます。

5.カルテ開示・マイかるて

患者には、療養の主体者として様々な権利があり、「知る権利」もその1つです。ご自身に関する、診療・ケアの記録、検査結果等を含む全ての医療記録の開示を求める権利があります。
下のグラフは当院で行われたカルテ開示実施数です。増加傾向にあります。

当院では、カルテ開示よりも気軽に自分のカルテが見られるように、2011年8月から自分のカルテを確認できる「マイかるて」の運用を進めています。
「マイかるて」は自分の病気のこと、自分が抱えている健康上の問題は何かについて知ることができ、情報を医療者と共有し、コミュニケーションをより円滑にすることで、良い治療をすすめていくためものです。
実際に使用した方からは、自分の病気についての知識が増えた、医療者に意見が言えるようになったなどの声をいただいています。
マイかるての利用には申し込みが必要です。申請用紙に必要事項を書き、総合受付に提出し、手続きが終了したら、院内にある専用端末からカルテを閲覧することができます。
マイかるての登録人数は年々増加しており、アクセス回数も増加傾向です。

今後もマイかるて利用のお知らせを継続して行い、医療生協ならではの参加と協同の医療を進めていきたいと考えています。

6.虹の箱投書数

虹の箱とは、ご意見・ご要望・ご提案を寄せていただき、それらを改善に活かすことでよりよい病院づくりに繋げていく、患者と病院協同の取り組みです。院内15か所に虹の箱を設置しており、毎日投書の回収を行っています。
虹の箱の投書には、患者の立場からの率直なご指摘のほか、「○○してはどうか」などといった具体的な提案なども寄せていただいており、担当部門や関係部署で検討し、改善に活かしています。
下のグラフは、虹の箱の投書数と投書に記名があった割合(記名投書率)を示したものですが、2018年は投書数が減少しており、また、記名のある投書は全体の約半数程度となっています。

記名投書率が年々減少していますが、投書にお名前と連絡先を記入された方には、検討した結果をお返ししていますので、ぜひご記入をお願いします。より良い医療の実現のために、ご意見、ご要望等お待ちしています。

7.がんの検診

がんは早期発見、早期治療が重要です。がんを早期に発見する手段として、検診があります。検診は症状がないうちにがんを発見することにより、がんによる死亡のリスクを減らすことを目的としています。
当院の全国がん登録(注1)のデータ(胃がん、子宮頸がん、肺がん、乳がん、大腸がん)では、がんの早期のステージである0期、Ⅰ期で見つかった割合が検診(健康診断も含む)では78%。自ら症状を自覚し受診して見つかった場合のステージ0期、Ⅰ期の割合は41%でした。検診はがんを100%発見できるわけではありませんが、早期に発見するためのひとつの有効な手段と言えます。

下のグラフは大腸がん検診で要精査(便潜血判定D)の件数と、要精査となった人の内、どれだけの人が精密検査を受けたかを割合で表しています(当院で検診を受けて当院で精密検査を実施した方)
当院で検診をした後に他院で精密検査を受けた人の数は、情報が入らなく正確な数が分からないため、下のグラフの数字には含まれていません。2019年からは川口市のがん検診を受けた方の、要精査後の精密検査の結果連絡票が、検診を受けた病院に届くようになりました。現在、その連絡票が少しずつ届いています。今後はこれらの連絡票の情報も活用し、精密検査未実施者の管理、追いかけを進めていきたいと思います。
本来、精密検査実施率は100%でなくてはいけません。検診の結果が要精査だった場合は必ず、精密検査を受けましょう。

がん検診を受けられる方は年々増えていますが、2016年に実施された国民生活基礎調査(注2)によると大腸がん検診の受診率の平均は男性(40~69歳)が44.5%。女性(40~69歳)は38.5%で、まだまだ低い割合となっています。
国で推奨しているがん検診は5種類あります。「胃がん検診、子宮頚がん検診、肺がん検診、乳がん検診、大腸がん検診」です。がん検診は自治体で行っているもの、また会社勤務の方は会社の健康診断にがん検診の内容が含まれている場合もあります。内容確認していただき、ぜひがん検診を定期的に受けましょう。

(注1)全国のがん患者の情報を国でひとつにまとめて管理するシステム。「がん登録推進法」に基づいて実施。

(注2)国民生活基礎調査 2016年実施大規模調査 厚生労働省

8.栄養管理(栄養アセスメント)

栄養管理は全ての疾患治療の基本となるものです。仮に栄養管理が十分でなかった場合、手術や薬などの治療の効果もなくなってしまいます。また医療機関が入院治療を行う際は、患者の栄養状態の評価を行い、栄養管理計画を立てた上で必要な栄養管理を、管理栄養士をはじめ、医師、看護師、薬剤師、リハビリなど多職種で行わなければならないとされています。入院治療においても栄養管理は重要なものとなっています。
栄養管理は、まず患者がどのような栄養状態か、栄養に関わる情報を収集し評価を行う“アセスメント”が必要です。適切なアセスメントを入院後早期に行うことによって、患者の栄養改善につながっていきます。当院では栄養管理に関する指標で、「65歳以上の患者の入院3日以内の栄養アセスメントの実施割合(アセスメントの内容がカルテに記録されている割合)」という項目を設定し、入院早期の栄養アセスメントを実施して、栄養管理の向上に取り組んでいます。

下のグラフは、2017年~2019(1~9月)の「入院3日以内の栄養アセスメント実施割合」のデータです。

2017年の「入院3日以内の栄養アセスメント実施割合」は37.5%と低い割合でした。
2018年は69.8%、2019年は72.6%と実施割合は高くなっており、入院後早期に栄養アセスメントが実施できています。今後も早期にアセスメントを実施していき、栄養管理の改善につなげていきます。

9.急性胆のう炎に対する手術について

急性胆のう炎とは?

胆のうに炎症が起こっている状態で、胆のう結石が原因(胆のうと胆管をつないでいる胆のう管に石が詰まるなど)で起こることがほとんどです。詰まってしまうことに加えて細菌の感染や、胆のうに膵液が逆流することにより胆のう炎が引き起こされると考えられています。症状や検査結果から急性胆のう炎と診断し、重症度が判定され、重症度に応じて治療が行われます。

急性胆のう炎の治療

絶食と輸液、抗菌薬などの初期治療の後に胆のう摘出術が行われます。急性胆のう炎が重症の場合や合併する病気がある場合等は、症状が治まってから手術(待機的手術)を行います。発症から72時間以内でかつ比較的軽症の場合、手術を行える状況にあれば早期に手術(早期手術)を行います。

胆のう摘出術について

開腹手術(お腹を切って行う手術)と、腹腔鏡手術(腹腔に内視鏡を入れて行う手術)があります。腹腔鏡手術は、手術による傷口が小さく回復も早く痛みも少ないため、現在はほとんどが腹腔鏡による手術です。

以下2015年~2018年までの腹腔鏡による胆のう摘出術件数の推移をグラフに表しました。(早期手術と待機的手術で件数を分けています)

早期手術の件数は2015年の2件から2018年は21件と増加しています。早期手術は、待機的手術と比べて治療期間が短くできる(待機的手術の場合、待機期間に再度胆のう炎を起こしてしまう等により治療が長引いてしまうことがある)ため患者にとってメリットが大きい治療であると考えられ、今後も取り組みを進めていきたいと考えています。

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