機能評価診療実績

診療実績 2020年

1.妊娠中の適切な体重管理について

妊娠中に推奨される体重増加量

妊娠し出産するまでの間に、妊婦さんの体重は赤ちゃんの成長に合わせて、赤ちゃん自身の体重や子宮、胎盤、羊水、血液、脂肪等により少しずつ増えていきます。しかしながら、妊婦さんの体重が増えすぎると、妊娠高血圧症候群(注1)や妊娠糖尿病(注2)、赤ちゃんの体重が増加しすぎて難産になりやすいなどのリスクが高くなると言われています。一方、体重が適切に増加しない場合には貧血、早産、低出生体重児(体重が2,500g未満で生まれた児)のリスクが高くなると言われています。

厚生労働省の妊産婦のための食生活指針によると、推奨体重増加量は、妊娠前のBMI(Body Mass Index)により区分が分かれており、下記表の通りとなっています。なお、BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で算出され、例として身長160cm、体重55kgの人のBMIは60(kg)÷1.6(m)÷1.6(m)=21.5となります。なお、当院では普通の体格の方は8kg程度の体重増加に抑えるよう説明しています。

体格区分
(非妊娠時の体格)
推奨体重増加量 当院で説明している
体重増加量の上限
妊娠全期間を通しての
推奨体重増加量
やせ:BMI 18.5未満 9~12kg 12kg
普通:BMI 18.5以上25.0未満 7~12kg 8kg
肥満:BMI 25.0以上 個別対応 *1 0~5kg

*1 BMIが25.0をやや超える程度の場合にはおおよそ5kgを目安とし、著しく超える場合には他のリスクなどを考慮しながら臨床的な状況を踏まえ個別に対応していく

当院での妊娠中の体重管理

当院で出産した方の出産前の体重が、推奨体重増加量の範囲内に収まったのかを確認したものが、以下のグラフになります。

基準内の体重増加である方は半分に満たない状況ではありますが、適正な体重増加が図れるよう当院では様々な取り組みをしています。
まず、妊娠12週の妊婦健診より前に、妊娠前のBMIを確認し、出産直前の目標体重を妊婦さんと一緒に確認しています。毎回の妊婦健診時には助産師が体重の増減をチェックしており、増えすぎていたり、あまり増えていなかったりする場合には、普段何を食べているかお話を聞いたり、食事メニューなどのアドバイスをしたり、管理栄養士の栄養相談を行ったりして、適正な体重増加が図れるようお手伝いをしています。妊婦さんで体重管理に不安のある方や疑問のある方は健診・受診時にお気軽に助産師にお聞きください。

[引用・参考文献]
・厚生労働省.妊産婦のための食生活指針:「健やか親子21」推進検討会報告書.2006
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/h0201-3a.html 〔2018.7.22〕

(注1:妊娠高血圧症候群)
妊娠時に高血圧を発症することです。重症になると妊婦さんには血圧上昇、たんぱく尿、けいれん発作、脳出血、肝機能障害などを引き起こすことがあります。また、赤ちゃんの発育が悪くなったり、胎盤が子宮の壁からはがれて赤ちゃんに酸素が届かなくなり、妊婦さんと赤ちゃんともに危険な状態となることがあります。

(注2:妊娠糖尿病)
妊娠中に初めて発見された糖代謝異常です。妊婦さんが高血糖であると、お腹の中の赤ちゃんも高血糖になり、様々な合併症が起こりえます。妊婦さんは妊娠高血圧症候群や羊水量の異常、赤ちゃんが大きくなりすぎることによる難産・帝王切開率の増加、網膜症・腎症およびそれらの悪化などが起こることがあります。赤ちゃんは子宮内で大きくなりすぎたり、心臓の肥大、低血糖、黄疸になることがあります。

2.がんを早期発見・早期治療するために

がん診療機能を表す指標として早期発見・早期治療の割合を出しています。多くのがんは早期発見・治療によって完治が可能な病気になってきています。昨年、当院でがん(ステージ0期~Ⅳ期)と診断された患者514人のうち、45%の方が「0~Ⅰ期」の早期がんで、65%の方は「Ⅱ~Ⅳ期」の進行がんでした[図1]。ステージ別にがんが発見された経緯を見ると、早期がんでは、がん検診・健診や他疾患の経過観察中の定期検査などで発見された割合が、進行がんに比べて高いことがわかります[図2]。自覚症状が現れる前に、定期的に身体の健康状態をチェックして早期発見につなげることが大事です。当院では、感染対策をしっかり行いながら健診を受けられるよう整備しています。また異常が発見されたら放置せず、精密検査を受けましょう。

3.緩和ケア病棟の適時の受け入れと患者とご家族の意向にそったケア

埼玉協同病院では、医療の質改善(QI)の指標を設定して、医療水準・質の面での改善目標を決めて取り組んでいます。今回とりあげる指標は、緩和ケア医療の質についてです。

スムーズな入院受け入れと患者と家族の意向に寄り添ったケア

入院待機日数は適時の受け入れを表す指標で、入院申し込みから入院までの日数です。2019年が2日と短かったのは緊急入院が多かった影響で、また入院後すぐに亡くなられた事例も多く入院期間も短めでした。2020年に実施したご遺族へのアンケートでは、回答者71人中「患者の主体性や意向を尊重してケアが提供されている」と答えたのは57人(80%)でした。2021年は、待機日数、病棟で亡くなられた方の在院日数が長くなり、生存退院割合も2019年の29%から2021年は53%と高くなっています。住み慣れたご自宅で最期まで過ごせるための苦しみを和らげる支援へと機能が変化している現れといえます。

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