埼玉協同病院

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病院の取り組み 診療実績

診療実績

2019年

埼玉協同病院では、2005年から300項目以上の医療の質改善(QI)の指標を設定して、医療水準・質の面での改善課題や引き上げ目標を明確にして取り組んでいます。
今回とりあげる指標は、薬を多数併用することで起こる害を減らすとりくみについてです。

1.75歳以上の大腿骨頸部骨折患者における退院時再歩行獲得割合

■大腿骨頸部骨折の治療
今回とりあげる指標は、高齢者の要介護状態となる原因の1つである大腿骨頸部骨折についてです。大腿骨頸部骨折は、骨量の減少などで骨がもろくなることに加え、筋力の低下により転びやすくなることで高齢者に多い傷病です。多くは骨をつなぐなどの手術を行い、リハビリテーションにより、筋力をつけ歩行ができる状態にトレーニングを行いますが、骨折の状態、病前の状態によっては、手術等の処置はせず保存的に経過観察することもあります。

■再び歩いて退院できることを目標に
図1は75歳以上の骨折患者で、接合手術(つなぎ合わせる)実施後退院までに再歩行が獲得できた割合の推移です。再歩行獲得者とは骨折前に歩けていた人が、杖使用または使用なしで他人の助けを借りずに歩けるようになった人です。未獲得者は歩くことができない、車いすや介助が必要な状態の人です。2017年2018年と再歩行獲得の割合が増えたものの、2019年には少し低下しました。

図1 退院時再歩行獲得割合

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■入院期間の違い
退院時に歩行ができる状態に回復し、退院後は日常生活ができるのが望ましいのですが、傷が回復した段階で退院し、リハビリテーションは他の機関で行ったり、外来通院と自宅での歩行訓練をする場合などがあります。再歩行獲得できた患者と再歩行獲得まではいたらなかった患者の在院日数(入院期間)を比較(図2)すると、2019年は再歩行獲得者の在院日数に比べて、未獲得者の在院日数は約半分です。術後の早期離床とリハビリテーションが順調に進み、自宅または他施設でのリハビリテーションで自立歩行が見込める方は早期の退院となっていることが多いようです。

図2 在院日数比較

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■回復期リハビリテーション病棟の利用
一方、回復期リハビリテーション病棟で引き続き日常生活に必要な機能を獲得するための訓練を行う方は長めの入院期間を要していることがわかります。特に2019年は前年までに比べて回復期リハビリテーション病棟への転棟者が増加(15%→28%)し、100日を超える方も多かったため再歩行獲得者の入院期間が大きく伸びています。転棟なしの場合で比べると、退院時の再歩行獲得者25.3日、未獲得者22.5日と3日の違いにとどまっており、全体に入院期間は短くなっています。

■患者側の要因
日頃から筋力を維持することが、転倒・骨折を予防することや、また骨折しても回復を早めることにつながります。

2.薬の多剤併用による害を減らすとりくみ

■多剤併用療法のリスク
若い時には病状をコントロールし健康を維持するうえで必要かつ適切だった薬でも、年を重ねると身体の働き(解毒や排泄)が低下し、薬の効き過ぎや害が大きく現れることがあります。加齢によってたくさんの病気が生じ、それぞれの疾患・症状ごとに薬が処方されることも少なくありません。特に各診療科の専門医からの処方を受けることで、多数の薬が処方されがちですが、同じような作用の薬や、服用する量が増えれば肝臓や腎臓などの負担などがより多くなり、体調に悪影響を及ぼしている場合があります。

■入院時の薬の見直し
入院時は、病状の悪化やなんらかの体調変化が起きているわけですから、これまで服用されていた薬を見直すチャンスでもあります。薬剤師は、服薬の状況、似た薬の重複の有無や、効果の評価、今回の病状に悪影響を与えているかしれない薬がないかなどを調べて、医師とお薬の調整について検討します。患者さんの意向を確認しながら、薬を減らせるかどうかを慎重に検討し、病状の変化などを慎重に評価しながら進めます。

■多剤併用の実態
図1は、6月のある1週間の入院患者のうち、定期内服薬がある方の薬の種類数を年代別に見たものです。65歳未満の方では、7剤以上の方が約2割であるのに対して65歳以上の高齢者では4割、一般に有害な影響が多いとされる6剤以上の割合を見ると65歳~74歳の方で過半数となり、後期高齢者(75歳以上)では6割近くにまで上っていることがわかります。

図1 年代別の定期内服薬の種類

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■多剤併用を減らすとりくみ
図2は民医連に加盟するDPC対象病院(当院と同様の機能・規模の病院)との比較です。定期内服薬7剤以上の割合は残念ながら、多剤併用を減らすとりくみはまだまだ効果が出ているとは言えず、増える傾向にあります。薬の調整には長期間を要する場合が多く、短い入院期間だけで無理に減らすことは逆効果の場合もあります。退院後の外来療養を担当されるクリニックや薬局との情報交換をしながら、患者さん中心に進めることが大事です。

図2 65歳以上の定期内服7剤以上の割合

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■患者さんにおすすめしたいこと~医師や薬剤師と薬や治療のことを話し合ってみましょう
まずは、服用している薬1つ1つの目的を確認しましょう。どんな効果がありどんな副作用が起こりうるのか、いつまで飲むのか、どんな状態ならやめられるのか、薬以外の方法や、どんなことに気をつければよいかなどを医師に尋ねましょう。

▣ずっと飲んでいるけど、よくなっている気がしない。
▣以前に、一時的にあった症状に対して処方された薬が今も処方されている。
▣飲み残している薬がある。指示通り飲んでいない。
▣1回の量が多すぎる。飲み方が複雑で指示どおり飲めないことが時々ある。
▣飲んだあとしばらく具合が悪い(ボォッとする、だるい、元気がでない、落ち着かない、気持ちが悪い、口が渇く、ドキドキする)。
こんな経験はありませんか。長年ずっと飲んでいるからといって安全とは限りません。気づかないうちに、悪い影響が出ているかもしれません。3ヶ月前、半年前と比べて体調の変化・不調がないか注意を払いましょう。ささいなことでも医師に質問することから始めましょう。

■薬を減らしたい患者さんへ~医師に「薬を減らしたい」と伝えましょう

①服用中の状態・状況を詳しく伝えましょう
…不適切な処方である可能性をみつけ適切にすることに役立つでしょう。
②薬剤師に相談してください
…薬の専門職として医師との対話の橋渡しをし、安全で適切な薬物療法を実現する手助けができます。
③おくすり手帳は1冊にまとめ、医師・薬剤師に見せてください
…複数の病・医院からの処方を把握するのに重要です。