埼玉協同病院

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専門医シリーズ12

スタッフの技術と人柄で8割の在宅復帰

専門医シリーズ 12

野口 周一 医師

プロフィール●

2005年入職。後期研修の1年間を東大病院(リハビリテーション科専門医研修の基幹施設。埼玉協同病院は連携施設となっている)で研修。2015年リハビリテーション専門医取得。

スタッフの力を信じてまかせる。 そんな野口医師がめざす協同病院のリハビリテーションの取り組み。その特徴や現状と課題などについてお聞きしました。

リハビリテーション科を目指したきっかけ

入職時には、「リハビリテーション科に行きたいと全面押しすると、落ちるかも知れないから、そのへんはぼやかして興味がありますくらいにしといた方がいい」と言われたと野口医師を笑います。「怒ったところを見たことがない」「看護師を信頼し任せてくれる」「患者さんの話をよく聞いている」「相談しやすい」と周りのスタッフは絶大な信頼を寄せています。
リハビリテーション科に興味を持ったのは大学5年の臨床実習。リハビリテーション科の実習で近隣の総合病院へ行きました。脳神経外科出身のリハビリテーション科の先生は嚥下障害のリハビリテーションを積極的にやっていて、初めて触れたリハビリテーションにとても共感したと言います。「当時は内科や外科の指導医がいかにも医系マッチョな感じで合わなかったですよね。リハビリテーション科の先生は人当りがソフトで良い印象でした」と冗談交じりに話し、続けて「リハビリテーション科は急性期もありますが、あまりせかされず、じっくり考えて、患者と共に方向性を決めて取り組める点が自分に合っていると感じた」とも話します。
協同病院に入って3年目にはリハビリテーション科と拠点病院の研修を半年やって、後はずっとリハビリテーション科です。

来た時よりも一つでもできることを増やす

スタッフに「言葉に出して、ここを大事にしてきましょうと言ったことはない」と言う野口医師に、今一番大切にしていることを訊ねると「医師はリハビリテーションを処方しますが、セラピストが実施してくれないとリハビリテーションは成立しません。みんなが話しかけやすいように心掛け、各職種と協力していくことを意識しています」
もう一つは、「患者が来たときよりも一つでもできることを増やしていくこと」と言います。リハビリテーションにとって必要なことは、技術はもちろんですが、患者がリハビリテーションの主体者として取り組むためのサポートだと考えています。それがないとリハビリテーションは成功しないと言い切ります。患者のモチベーションを上げるスタッフとの触れ合いや医師の声かけ、動けるようになってやる気を出す人、お孫さんの写真でやる気を出す人もいます。
「うちのスタッフは技術も持っていますが、その人柄もリハビリテーションを進める意欲にとって重要です」「強制的にやってもうまくいかない。消極的だったり、拒否があることが一番困ります」
そのスタッフの力により、協同病院の回復期リハビリテーション病棟では在宅復帰率を約8割に維持しています。

地域で果たす役割

重症者の受け入れ、機能・能力の回復度、在宅復帰率、提供するリハビリテーションの単位数など、医療保険上、求められる条件や制限されることが多く、回復期リハビリテーション病棟をとりまく状況は厳しく、今後もよりいっそう厳しくなることが予想されます。
協同病院は内科・外科・整形外科などの急性期病棟に回復期病棟が併設されています。回復期リハビリテーション病棟には急性期病棟からの転科の患者さんとともに他の病院から紹介された患者さんも多く入院しています。
入院中、併存疾患の悪化などにより、急性期治療が必要になることもしばしばあります。他科との相談はしやすく、連携も図ることができ、円滑な治療が可能となっています。精神科や人工透析もあり、他院の回復期病棟では治療ができない患者さんを受け入れることが可能です。そういう点で非常に守備範囲が広い大切な役割を地域で担っているといえます。
障害がある人も本人・家族の希望があれば自宅へ退院できることも多くなっています。その背景として、医療相談員が介護保険や身体障害者手帳の申請などを早期にサポートし、社会資源を十分に利用できるよう退院支援をしていることが挙げられます。医療相談員が患者さんやその家族をしっかり支援する力は協同病院の強みになっています。

可能性の広がるリハビリテーション

リハビリテーション医学においては臨床的に用いられるエビデンスが不足していると言われています。リハビリテーション医学ではランダム化比較試験を行いにくいことも新たなエビデンスが作られにくい要因と考えられます。しかし、少しずついろいろな疾患の治療ガイドラインにリハビリテーションの有用性が記載されるようになってきています。
脳卒中早期のリハビリテーションには議論があります。1990年代ころから早期リハビリテーションの有効性が報告されるようになり、脳卒中ガイドラインでも推奨されています。しかし、最近、オーストリアなど5か国で行われたランダム化比較試験では発症後24時間以内の超早期の離床は3か月後の改善を小さくする可能性があると報告されました。この結果には批判もあり、その後も新たな知見報告がでている状況です。
協同病院でのリハビリテーションは高齢者を対象にしていることが多く、脳卒中や骨折・人工関節などの手術後の方が中心です。しかし、これはリハビリテーションのごく一部に過ぎず、様々な年齢・疾患がリハビリテーションの対象です。また、リハビリテーションで扱うものには、従来からの杖、装具、義足や種々の介護用品などに加え、近年では筋肉の信号で動作する筋電義手や保険適応となったロボットスーツHALなどがあり、医学の分野にとどまらず、さまざまに広がっています。
そういう点で、リハビリテーション科はどこかに興味や専門性を見出すことができるやりがいのある分野と考えます。充実した研修ができる環境もあるので、若い医師がリハビリテーション科を志望し、患者さんの治療にも地域でのリハビリテーションにも幅が広がることを期待しています。