専門医シリーズ

目指すのは「よろず相談所」のような放射線科医

専門医シリーズ33

岡崎 百子 医師

プロフィール

<認定資格>日本医学放射線学会放射線診断専門医、日本核医学会専門医、PET核医学認定医

<経歴>2007年 島根大学 医学部卒業、2015年 横浜市立大学医学研究科放射線医学博士課程修了、2015年 埼玉協同病院勤務

文学部を経由して医師の道へ

重県出身の岡㟢医師。父親が脳外科医の家庭で育ち、その背中を見て育った子どもたち3人も全員医師となりました。
「私は最初、大学は文学部に入学しました。その頃、妹と弟がそれぞれ医学部に行っていて、勉強がとても面白いという話しをいつもしていました。それを聞いているうちに、やはり私も医師を志そうと思うようになったのです」
文学部を卒業してから、島根大学医学部へ。「再受験組として、受験しやすい大学だったこと、それから、神社好きで出雲大社がある島根という土地に惹かれました。日本海側だから、冬は寒くて雪がたくさん降ります。初めて暮らす土地で、勉強の合間を縫ってはあちこち出かけて、忘れがたい楽しい時間を島根で過ごしました」

「よろず相談所」のような放射線科医に出会う

医学部を卒業後、結婚を機に関東に拠点を移し、国立病院機構横浜医療センターで研修を始めます。当時、岡㟢医師はこれから専門にしていく科をまだ決めていませんでした。さまざまな診療科をまわる研修の中で、「院内のよろず相談所」のような役割を果たす放射線科の指導医に出会います。
「いろいろな科の医師たちが、放射線科の読影室に出入りしては、これはどう考えるべきか?こう捉えられないか?と相談、議論していかれる。その指導医は、さまざまな分野の相談を丁寧に聞き、意見を述べ、たいへん頼りにされる存在でした。放射線科医とは幅広い知識をもとに、まるで院内のよろず相談所のような役割を果たすのだ!と。放射線科医に興味が湧いた瞬間でした」
また当時はまだ試験的な取り組みでしたが、遠隔での画像診断技術も確立しつつあり、在宅勤務の実現性も見え始めていました。「子どもが生まれても働きやすい、ワークライフバランスの取りやすい分野でもあったことも、放射線科医を選んだ理由の1つです」。実際、新型コロナウイルスの影響で子どもの通う学校が一斉休校になったときは、在宅で勤務をしていたと言います。

画像を通して患者さんを見守る

現代の医療は画像診断なくしては成り立ちませんが、病院を受診しても、放射線科の医師と患者さんが直接話す機会はなかなかありません。放射線科医は、病院のどこにいて、どんな仕事をしているのでしょうか?
「朝、読影室に出勤すると、画像データが30件くらい届いています。これを数人の放射線科医で分担して読影していきます。連絡が入って急ぎの画像を診たり、『腹痛の原因は何でしょうか?』と直接相談にこられる医師とお話したり、という1日をイメージしてもらえたらいいですね。連休明けは50~80件程度になることもあります。少し前に、テレビで『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』というドラマが放送されました。放射線科医が主人公です。その時はようやく放射線科医にスポットが当たった!と思いましたね」
院内で撮影されるほぼすべてのCTやMRI画像について、放射線科医が目を通しています。定期的な検査で上がってくる画像から、患者さんが回復されていく経過を診ていくこともあります。「たとえば、化学療法後の評価で、腫瘍がだんだん小さくなっていく。主治医の先生方が治療をがんばられてうまくいっているのだと嬉しくなります」。また、自分の書いた診断から、その後どういう治療がなされているのか気になってカルテを確認することもあります。緊急で撮影された画像に偶然写り込んだ他部位の病変を指摘することもあります。
「放射線科医は、患者さんと直接言葉を交わすことは少ないのですが、画像に写ったものを丁寧に読み込むことで、適切な治療へとつなげていくという大切な役割を担っています。縁の下で医療を支えている、私はそこに大きなやりがいを感じています」

全身を診るために、知識を広げ続ける

放射線科医はそれぞれ得意とする臓器分野も持っていますが、病院業務の中では日々、あらゆる臓器や疾患に関する画像診断能力が求められます。「全身の、多岐にわたる疾患に精通する必要があり、さまざまな科の知識を広く勉強し続ける必要があります。ここが放射線科医の奥深さであり面白さであると感じています」
「まだまだ未熟ですがかつて出会った指導医のように、さまざまな相談に乗れる頼もしい放射線科医を目指して、日々勉強していきたいです」と笑顔で返してくれました。


【患者さんへの一言メッセージ】
直接お会いする機会はあまりないと思いますが、CT、MRI、全部しっかりと診ていますのでご安心ください!

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