専門医シリーズ

良い手術で結果を出す。その積み重ねに終わりはありません

専門医シリーズ25

佐野 貴之 医師

プロフィール

埼玉県ふじみ野市出身。2005年、高知大学医学部卒業。同年、埼玉協同病院勤務。2011年、長野厚生連佐久総合病院にて消化器外科研修。日本外科学会外科専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医、日本消化器外科学会専門医、消化器がん外科治療認定医、日本腹部救急医学会腹部救急認定医

医師になって16年。同期の栗原唯生医師(専門医シリーズ19)とともに、消化器の外科手術の最前線を走る佐野医師は、消化管(大腸)を担当。腹腔鏡手術を中心に、患者さんの体に負担の少ない手術を行います。

手術するだけでなく主治医として患者さんを診る

大腸がんの手術には、主に、おなかを大きく切開してがんを取り除く開腹手術と、おなかに開けた小さな穴からカメラや器具を入れて手術する腹腔鏡手術があります。
腹腔鏡手術は傷が小さく、患者さんの体の負担も少ないですが、テレビモニターを見ながら行うため、技術や集中力が必要です。その腹腔鏡手術を専門病院で学び、診療に生かしているのが佐野医師です。
手術を担当するだけでなく、主治医として、患者さんの術後の経過もしっかりと見守ります。

「医者って熱い世界だな!」と高校時代にあこがれて

医師を志したのは高校生のとき。
「2回、気胸になったんです。肺に穴が開いて、苦しくなって、自分の体や病気のことをいろいろ考えました。友達が、手塚治虫の漫画『ブラックジャック』を勧めてくれて、一緒に医師を目指そう!と言ってくれたことも大きかったです」
決め手になったのは、高校2年で参加した埼玉協同病院の「1日医師体験」。
「医療の現場を身近に感じ、直接、人の役に立てる仕事っていいなと思いました。研修医の先生たちが情熱的で、熱い世界だな、医師になるのは大変だけどやりがいがありそうだなと感じて。当時研修医の1人が、『医学部に入るのに8年かかった』と話されたのも印象に残っています。いろんな人がいるんだなって」
佐野医師も、すぐには医学部に合格できず、薬学部へ進学。大学での勉強と受験勉強を両立し、夢を叶えました。埼玉民医連・医療生協さいたまの奨学生として学び、卒業後は、そのまま埼玉協同病院へ入職。
「1日体験の印象が良かったし、ほかで働くことは考えなかったですね」

厳しい研修で身につけた大腸がんの腹腔鏡手術

外科医を選んだ理由は、手応えを感じられるからだそうです。
「外科は、自分の手技が治療に直結するので、患者さんの治療に関われていることが目に見えて実感できます。
研修医時代からの中心静脈カテーテル留置や内視鏡研修などを通して手技を磨く過程が自分に合っていると感じました。
医師になって7年目の2011年、今に至る転機が訪れました。医療の世界が臓器別の分業制になっていくのを受け、埼玉協同病院でも体制を整えていこうと、自分の専門を決めたのです。
「一人が何でも担当するより、それぞれが一つの分野を追求していく方がレベルも上がるし効率的です。病院の将来を考えて、同期の栗原医師と相談。私が消化管の腹腔鏡手術、栗原医師が肝胆膵の手術を専門にすることにしました」
研修先の佐久総合病院で、腹腔鏡手術で有名な大腸がんの名医に師事。指導は厳しく、体力的にも精神的にもきつい1年間だったと振り返ります。
「毎日、手術室で怒られました。でも、手術が上手になりたくて行ったのだから、挫けるわけにはいきません。今も毎日、『もっと良い手術をしたい』という気持ちで手術に臨んでいます。ゴールはなく、常に向上を目指していく。それが外科医なんです」

日々の積み重ねでチームの力量を上げる

元々、埼玉協同病院では、市川医師が胆のう摘出術から導入した腹腔鏡手術を行ってきました。
自身の研修後、さらに消化管の腹腔鏡下手術の症例を増やしてきました。その道のりも、一歩一歩の積み重ねだったといいます。
「腹腔鏡手術は、一人だけが上手でも成り立ちません。おなかの中で、カメラや鉗子(挟む器具)を助手が操作するので、カメラや鉗子を持つ人にも慣れてもらうことが大事。全員が上手にならなければうまく進まないのです。
とはいえ、専門病院ではないので、毎回、腹腔鏡手術ができるわけでもありません。手術室のスタッフや麻酔科の先生にも協力してもらいながら手術を組み、一つひとつの手術を大切に、経験を積み重ねていきました。今では手術時間も短くなり、術後の回復も安定するようになっています」
地域の中で手術を受けることができれば、入院中のお見舞いや、その後の通院の負担も少なくなります。腹腔鏡手術の技術を地域医療に根付かせようと、佐野医師と手術チームは研鑽を続けています。

虫垂炎の手術を受けてわかった患者さんの気持ち

昨年の夏、佐野医師は貴重な体験をしました。虫垂炎(盲腸)になり、初めて自分が腹腔鏡手術を受ける立場になったのです。
「手術を受けて、患者さんの気持ちがわかりました。小さな傷でも、こんなに痛いんだと。その経験は、その後の診療に生きています」
主治医として、一つひとつの手術、一人ひとりの患者さんに向き合い続ける。その積み重ねに終わりはありません。
手術後の外来で『おかげで元気です』と言われると、よかったなって思います。この病院を選んでいただける患者さんの病気をしっかり治して、地域医療に貢献していけるよう、これからもがんばっていきます」

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