埼玉協同病院

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専門医シリーズ15

ちょっと1年だけがもう25年 ノーストレスの最高の職場

専門医シリーズ 15

伊藤 理恵 医師

プロフィール●

日本皮膚科学会認定専門医、日本皮膚科学会認定指導医。1982年 帝京大学医学部卒業、1993年より埼玉協同病院勤務。

「皮膚疾患で診断や治療に苦しんでいる方は沢山おられますし、他の病気で重大な皮膚症状がでることもあります。マイナーですが必須な科として、その専門性で病院に役に立つことができます。」と皮膚科の役割を熱く語ります。協同病院に来た時は全部自分の責任で診療をさせてもらえるのでやり甲斐もあり楽しくもなった。だからこの病院で長く働き続けている、という伊藤医師にこれまでの思いや皮膚科の現状について伺います。

これは天職だ

「1年間の派遣予定が、もう1年、あと1年と今も大学に籍を置きながら協同病院は25年になります。」
帝京大卒業後に内科に入局。目が回る忙しさ、週に何回もの当直で身体をこわし、皮膚科で開業していたご両親が心配していたこともあり皮膚科に移りました。皮膚科入局は必ずしも本意ではなかったそうですが、入ってみれば皮膚科の仕事は面白く、また素晴らしい教授にも出会え、「これは天職だ」と思うほどだったそうです。妹さんも皮膚科医になり、今では家業は妹さんが継いでいます。
大学卒業10年で協同病院へ派遣医として着任します。前任医師急病のため急遽誰かという時に、たまたま浦和に住んでいた伊藤医師に「じゃあ、悪いけど近いから1年行ってくれない?」と。1993年1月でした。
「着任時はたった一人だった皮膚科医ですが、徐々に常勤や非常勤の医師が増え、今では非常勤医師8人と外来3診体制になっています。来ていただいている先生方は全員力のある皮膚科専門医。卒業大学や年代が違うため、かえって知識や興味深い症例の情報交換が有益で、お互いに切磋琢磨して勉強ができるなど、より良い医療ができる環境です。10年以上も来てくださる先生方がいらっしゃるのも、良いスタッフと働きやすい環境に恵まれているからだと思っています。」

皮膚科の総合医

他科を受診している患者様でも何らかの皮膚トラブルを抱えていることが多いそうです。多くはアトピー性皮膚炎、湿疹、乾皮症などの湿疹皮膚炎群や、細菌や真菌による感染症(ニキビや水虫など)など軽症のものが多いですが、時には重篤な疾患のこともあります。
皮膚病は炎症性疾患、自己免疫性疾患、腫瘍、感染症など非常に多彩です。伊藤医師は研修病院で皮膚外科を専門に学び、現在も年間300例の外科手術をしますが、基本は皮膚科の内科領域、特に指導教授が専門だった免疫や炎症性疾患が得意だそうです。そして星の数ほどもある皮膚病の中からピンポイントで診断をつけ、他のドクターが治せなかった病気を治すというのがとても面白いと話します。大学病院で働いていた時、重症の患者様や診断の難しい患者様を上級医が上手に診療しているのを目の当たりにし、自分も誰よりも最善の診療ができる医師になろうと決めたそうです。「最善の診療能力とはもちろん病気を診断する能力、治療する能力が中心ですが、それだけではありません。早く診療したり、カルテを簡潔かつ必要十分に書いたり、患者様に病気を上手く説明したり、スタッフや周りとのコミュニケーションをうまく取ったりなど、全てを含みます。すべてがハイレベルでできるよう今も自己研鑽の日々です。」と言います。
「協同病院は地域の病院であることから、困って受診された患者様はすべて診る、というスタンスに自分を変えてきました。ただ今は常勤医一人のため、患者様の入院が必要な場合、基本を内科で診てもらい、皮膚病だけの部分を相談しながら診療できるスタイルがとてもありがたいと感謝しています。また若い先生や非常勤の先生とのカンファレンスやチーム医療にも力をいれてきました。最近はいろいろな講演依頼もあり、これも出来る限り受けるようにしています。私一人が関われる患者数には限りがありますが、チームで全体の診療レベルを上げられればその何倍の数の患者様に貢献できます。」

皮膚科のトレンド

アトピー性皮膚炎は日本に多い病気ですが、20年ほど前に「ステロイドバッシング」「脱ステ」といってステロイド軟膏は毒だと騒がれました。今でいうフェイクニュースですが、医師の中にも同調する雰囲気がある中で〇〇布団や○○水を数十万円で売り出すアトピービジネスプロフィール日本皮膚科学会認定専門医、日本皮膚科学会認定指導医1982年帝京大学医学部卒業、1993年より埼玉協同病院勤務「皮膚疾患で診断や治療に苦しんでいる方は沢山おられますし、他の病気で重大な皮膚症状がでることもあります。マイナーですが必須な科として、その専門性で病院に役に立つことができます。」と皮膚科の役割を熱く語ります。協同病院に来た時は全部自分の責任で診療をさせてもらえるのでやり甲斐もあり楽しくもなった。だからこの病院で長く働き続けている、という伊藤医師にこれまでの思いや皮膚科の現状について伺います。が流行りました。常識的にはステロイドはもともと身体が作っているホルモンなので毒であるはずがないのですが、正しい情報がなかなか伝わらず、患者様にはつらい時代でした。現在は日本皮膚科学会が主導してガイドラインができ、ステロイド軟膏も正しく使用できるようになって重篤な方は少なくなってきています。
またアトピー性皮膚炎もそうですが、尋常性乾癬やじんましんにも生物製剤が使用できるようになり治療効果を上げています。ただ、どの薬も非常に高額なのが悩みの種です。アトピーの生物製剤の場合は健康保険の3割負担でも1回に25,000円、年間70万円近くとなり、よく効く薬だけに患者様にも医師にもジレンマです。

住み心地のよい25年

「今では大学から来年どうしますか?と聞かれなくなっちゃったんです。もう定年ですが、65歳までは定年延長で、その後は非常勤などで周りに迷惑にならないよう働いていければと思っています。大学には忘年会費を払うだけです…。(笑)」
今の職場は「スタッフが患者様を治すのに一生懸命で、いろいろ工夫してくれたり。見ている方向が同じなので、ここの皮膚科にいる限りノーストレス」と言います。患者様をいかに治すかだけに集中すればいいのでとてもありがたいと。そんなスタッフは伊藤家引越し前の取り壊し予定の壁に絵を書いたり、還暦のお祝いや忘年会などで集まっては、大いに盛り上がって楽しみます。
そして伊藤医師には隠れた趣味「卓球」があります。日本各地で行われる年に数回の医師卓球大会を観光がてら転戦します。「ハッキリ言って医師しかエントリーできない大会なので、私も参加できるようなもの。でも夫は元インターハイ選手。強いです。」と照れ笑い。「昔は卓球やってるなんて言えなかったけど、今の日本の卓球界を見ていたら言っちゃっていいかなって思いますよね」目の奥がキラリと光りました。