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ドラえもんのように誰かが笑顔になれる手助けをしたい
専門医シリーズ22
平澤 薫 医師
プロフィール
2000年、弘前大学医学部卒業。同年、埼玉協同病院入職。
2004年、さいたま市立病院小児科研修。
2005年より埼玉協同病院小児科。
日本小児科学会専門医。日本プライマリ・ケア学会認定プライマリ・ケア認定医。日本プライマリ・ケア連合学会認定指導医
子どもたちや親の成長を見守る小児科医。平澤薫医師は、病気だけでなく、子どもが育つ環境や心の奥にも細やかに目くばりし、インターネットやSNSでの情報発信も積極的に行っています。その原点は、あの漫画にありました。
漫画に救われていた 苦悩の子ども時代
小児科は、赤ちゃんから、主に15歳の子どもまでを対象にしています。病棟は明るい雰囲気で、平澤医師も、優しさがにじみ出るようなお人柄。人をほっとさせる雰囲気をもつ、癒やし系のドクターです。
ふと胸のあたりに目を向けると、白衣の下に「ドラえもん」のTシャツが透けて見えます。子どもたちを喜ばせるためでしょうか?
「それもありますが、僕が大好きなんです。幼稚園の頃からドラえもんが大好きで、作者の藤子・F・不二雄先生の大ファンでした。真似をして、祖父のベレー帽を頭に乗っけて漫画を描いていたくらい」
なんと、子ども時代の夢は「漫画家になること」だったそうです。
「あだ名は“ドラちゃん”。でも、僕自身は“のび太”みたいな感じで、ずっといじめられっ子でした。運動もあまりできないし、友達をつくろうとがんばってもうまくいかない。自分を表現できなくて、暗い人間だと思い込んでいました。そういう毎日の中で、漫画に癒やされていたんです」
漫画家になりたかったのは、漫画が、夢や希望を与えてくれるから。ドラえもんは、子どもの頃からずっと平澤医師のそばにいて、励ましてくれる存在だったのです。
いじめられっ子だったから 弱い人の気持ちがわかる
「だから僕も、自分がしてもらったことを、誰かにしてあげたい。自分が関わることで誰かが笑顔になったり、その人の人生の一部分でも明るく彩られたりするような手助けがしたい。そう思うようになりました」
中学3年生のとき、筋肉隆々の天才外科医が活躍する『スーパードクターK』という漫画を読んで衝撃を受け、将来の夢が医師へと変わります。
「スーパードクターになるために筋トレを始めて体を鍛え、医学部に入学。奨学金を得るために埼玉協同病院で話を聞き、すぐに奨学生になることを決めました。この病院は、弱い人の立場になって、弱者を守る姿勢を貫いていますよね。僕も、弱い人の気持ちがわかるから、とても共感できるんです」
子どもは、未来への希望の塊 育つ環境を丸ごと見守る
こうして、漫画のかわりに医療で人を癒す道に進んだ平澤医師は、外科ではなく、小児科を選びました。
「子どもは、未来への希望の塊のようなものだから、子どもたちの未来を守るような仕事がしたいと思ったんですね。もちろん、子どもが好きだったことも大きな理由です」
入職して20年。これまでに、たくさんの子どもたちとお父さん、お母さんたちを見守ってきました。
「子どもに限らず、どんな人が来ても診ることのできる懐の深い医者になりたくて、1年間は内科医として働いたこともあります。ここで生まれた子の中には、大きくなって医学部に入り、埼玉協同病院の奨学生になっている子もいるんです。もうすぐ一緒に働けると思うと楽しみですね」
小児科医は、病気だけを診るわけではないと平澤医師は言います。とくに近年は、子育ての大変さとともに、子どもの貧困や虐待なども社会問題になっており見過ごすことができません。
「子どもを支える親や生活環境、社会背景、親との関係など、家庭を見ていかなければ子どもを救えません。子どもの病気で受診したり、健診のときなどに親の表情がすぐれなかったり、子育てのつらさを感じたりすると、注意して話を聞いたり、看護師など他職種のスタッフにつないで共有するようにしています」
思い詰めたような表情で外来を受診し、声をかけると涙ぐんだり、堰を切ったように泣き出す親御さんもいるそうです。問題に気づき、手を差し伸べるための“入り口”の役割を果たすのも小児科医の役目だと言います。
「子育てカフェ」や「巣ごもりカフェ」 救いになる場をつくりたい
「一緒に取り組む仲間をつくったりすることができれば、子育ての救いになるのではないか」という思いから、平澤医師は、さまざまな取り組みをしています。
その一つが、「子育てカフェ」。時間と場所を設けて、子育ての不安や悩みを親同士で話し合ったり、医療スタッフに質問したりできるようにしたのです。コロナの影響で開催が難しくなってからは、オンラインでの「巣ごもりカフェ」にスタイルを変更。また、動画配信サービスや、SNSのLINEを使って、子育てに役立つ情報発信も積極的に行っています。
「がんばっているお母さんやお父さんたちにとって、1本の細いワラでもいいから、つかむものができればいいなと思って。この病院では、スタッフみんなが、子どもを取り巻く家庭が明るくなるように、笑顔になるようにという共通の思いを持っています。だから、いろいろなアイデアを提案しやすいんです」
悩んでいる親御さんたちに、「子どもはだいたい元気に育つので大丈夫ですよ、と言ってあげたい」と話す平澤医師。今では自身が、子育てをがんばる人たちにとっての「ドラえもん」のような存在になっているのかもしれません。
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