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頼ってくださる患者さんの気持ちに実力で応えたい
専門医シリーズ19
栗原 唯生 医師
プロフィール
日本外科学会外科専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医、日本肝臓学会専門医、日本消化器外科学会専門医、消化器がん外科治療認定医、肝胆膵外科学会評議員、ICD(Infection Control Doctor)
2005年 東北大学医学部卒業、同年埼玉協同病院勤務、
2012-13年 静岡県立静岡がんセンター肝胆膵外科研修、
2014年より埼玉協同病院勤務
おなかの深い位置にある肝臓、胆道、膵臓は、がんの外科治療の中でも難易度の高い分野です。埼玉協同病院では、そうした難しい手術も可能です。担当する栗原医師は、患者さんの力になりたい一心で専門医となり、技術や知識を磨き続けています。
スポーツドクターをめざした野球少年
「中学時代から打ち込んできた大好きな野球と関わり続けるために、スポーツドクターになろうと考えたのが
医師になったきっかけです」
こう話す栗原医師は、見るからに若々しいスポーツマン。まっすぐで誠実な人柄と、内に秘めた情熱が全身か
ら伝わってくるようなドクターです。
「いまは運動する時間がありませんが、長時間の手術をするには体力がいるので、筋トレだけは続けています。腕立て伏せ、腹筋、スクワット。休日に、子どもたちを公園で遊ばせながら筋トレをすることもあるんですよ」
医学部に進学したのは、看護師をしていた母親の影響もあったそうです。埼玉民医連・医療生協さいたまの奨学生として学生時代を過ごし、大学卒業後は、埼玉協同病院で研修医として働きはじめました。その頃には、スポーツドクターではなく、小児科に興味があったそうです。
「最終的に外科医の道を選んだのは、先輩の浅沼晃三医師(現・外科技術部長)からの強い勧めがあったからです。以来、経験を積みながら技術を磨き、大腸がんや胃がんの手術を担当するようになりました」
手術した患者さんをどうしても良くしたいから
外科には、他の診療科にはない特徴があると栗原医師は言います。
「治療のための手術とはいえ、外科医は、患者さんの体にメスを入れて、直接傷つけます。自分の手で患者さんの状態をいったん悪くしてしまうので、責任がありますよね。だから、どうしても良くしたい。そのために何ができるか、常に考えています」
胃がんや大腸がんは、比較的、手術の型(術式)が決まっていますが、難しいのが、肝臓に転移した進行がんの患者さんです。
「肝臓の手術には、いくつもの術式があり、患者さんの状態もさまざまです。幅広い知識や経験をもつ外科医でなければ、手術ができるか、どの術式がいいかといった判断が困難です。駆け出しの頃の私は、知識も技術も不足しており、受け持った患者さんがそうした状態になったとき、わからないことがたくさんありました。それでも患者さんは私を頼ってくれます。その気持ちに実力で応えられないことがもどかしく、腹立たしくてなりませんでした。だから、わからないことを勉強しようと思い、肝臓、胆道、膵臓を専門にすることにしたのです」
2年間の専門研修で 肝・胆・膵の力をつける
肝臓、胆道(胆嚢・胆管・十二指腸乳頭)、膵臓は、消化や吸収、解毒など、生命を維持するために欠かせない重要な役割をもつ臓器です。この領域を総称して、肝胆膵と呼びます。肝胆膵のがんを診断し、手術をするには、高度な知識と技術が必要となります。
栗原医師は、2012 年から2年間、国内留学のような形で、専門病院で経験を積みました。研修先は、肝胆膵外科で有名な静岡県立静岡がんセンターです。
「厳しい毎日でした。肝胆膵は、まる1日がかりの長い手術が多いので、朝から夜まで手術室にいる日もありました。全国から集まった研修医と切磋琢磨しながら、一つでも多く経験を積もうと必死でした。そこで得たものは、ありすぎて言いきれないです。あの研修があったからこそ今の自分があると断言できます」
2014 年に埼玉協同病院に戻ってからは、先輩や同僚、他の診療科の医師と連携しながら、肝胆膵の手術に取り組みました。
「医療の高度化・細分化が進んだ今の時代、1人の外科医が何の手術でもやるのではなく、総合力が必要です。患者さんの状態に合わせて、どこまで自分達で行うか、都度、判断が求められるのです。現在では、消化器外科に関する手術なら、食道以外、だいたいのことはできる体制を整えることができています」
患者さんの命を第一に困難な手術に挑戦していく
栗原医師が心がけているのは、手術の可能性を追求することと、チャレンジを続けることです。
「私たちの仕事には、患者さんの命がかかっています。総合力を上げて、手術をレベルアップし続けていくためには、これまで経験したことのないことにも挑戦していかなければなりません。それを、いかに安全に、患者さんの命を第一に行っていくか。強い心をもち、それを支える知識と技術を高め続けていくことが、外科医として自分にできることだと考えています」
肝胆膵外科は難しい分野で、医師としても、精神的、肉体的に苦しいことが多いといいます。
想定したような結果が出ずしんどくなることもありますが、これまで自分が経験してきたことのすべてを出し切って手術をし、それによって患者さんを助けることができたとき、本当によかったと思います。これからも力をつけて、できるだけ患者さんの望む治療、患者さんが納得できる治療をしたい。患者さんからいただく『ありがとう』という言葉に支えられています」
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