専門医シリーズ

耳、鼻、のどの疾患に幅広く対応。地域のニーズに応えます。

専門医シリーズ24

越智 篤 医師

プロフィール

神奈川県横浜市出身。2000年、東京大学医学部医学科卒業。大学病院や都立病院を経て、2012年より亀田総合病院耳鼻咽喉科部長。2018年より埼玉協同病院にて現職。日本耳鼻咽喉科学会専門医・指導医。

2018年、埼玉協同病院の耳鼻咽喉科に常勤のドクターが着任しました。大学病院や総合病院で経験を積んだ越智篤医師は、外来から手術まで、耳、鼻、のどの疾患を熟知する専門医。患者さんはもちろん、地域の開業医の先生方からも厚く信頼されています。

開業医の先生では扱いが難しい疾患を手がける

耳鼻咽喉科は、耳、鼻、のどの病気を診断・治療する科です。埼玉協同病院の耳鼻咽喉科は、市内の開業医さんと連携して診療に当たっています。
 「地域の中核病院ですから、その役割を果たすことが第一。開業医の先生では手の回らない、やや踏み込んだ検査・治療も行うことで地域の患者さんの役に立ちたい」
と、越智医師は穏やかに話します。
「たとえば、リハビリ病棟に入院していたり、在宅療養をしている患者さんで、人工呼吸器などをつけるために気管切開をしている方がいらっしゃいます。そうした患者さんにトラブルが起きたとき、耳鼻咽喉科の専門医がいなければ難しい場面が多いのです」
気管切開は、神経の難病であるALSや、脳梗塞、食道がんなど、いろいろな病気で必要になるそうです。他の科の医師からも頼りにされており、今号で取材した呼吸ケアチーム「RST」の回診(P.5)でも、人工呼吸器をつけた患者さんの呼吸がもっと楽になるよう、「越智先生に相談してみよう」と呼吸器科の先生が話している場面を目にしました。

新しい治療法を取り入れ重症の花粉症の治療も

重症の花粉症の患者さんの治療も行っており、地域の開業医の先生からの紹介がずいぶん増えているそうです。
「新しく承認された抗体医薬(生物学的製剤)という薬を使った治療や、舌下免疫療法を始めています。一歩踏み込んだ治療をしたい方は、紹介状を持って来ていただければ、いろいろな選択肢を提示します」
また、花粉症に限らず、ちくのう症などの鼻の手術や、扁桃腺の手術も行います。
埼玉協同病院には、長らく、耳鼻咽喉科の常勤の専門医がいませんでしたが、越智医師が着任したことで、このように、チーム医療や地域医療がしやすくなっているのです。
「気になる症状があれば、まずは地域の開業医の先生に診てもらい、そこでできないことは埼玉協同病院で診る。さらに専門性の高い疾患は、ある程度診断をつけた上で専門医療機関に紹介する。こうして、耳、鼻、のどの疾患をできるだけ地域の中で治療していけるよう、診療体制を整えています。
現在、紹介状なしの初診患者さんは予約不可で待ち時間も長くなっていますが、地域の内科・耳鼻科の開業医の先生からの紹介状をお持ちの方は予約可能(地域連携室にお電話いただいた場合)です。予約がない場合も比較的少ない待ち時間で診察しています」

においや聞こえ方など「感覚」を扱う面白さ

こうして活躍している越智医師ですが、子どもの頃は、エンジニアや科学者にあこがれていたそうです。しかし、実験や研究は向いていないと思い、医学の道へ。学生時代、寮で一番仲が良かった先輩が耳鼻咽喉科を選んだことから、この分野に興味を持ったそうです。
「一つのことを突き詰めるよりも、いろいろなことを幅広く扱う方が好きなので、広い範囲をカバーする耳鼻咽喉科が自分に合っているんです。たとえば、首の部分には、呼吸をしたり、ごはんを食べたりするためのいろいろな神経や機能が集まっていて、とても複雑です。
のどの手術と、耳の手術はまったく違うし、薬で治す、リハビリで治す、手術で治すというように、治療法もひとつに特化しないですべて網羅していなければいけません。そこにやりがいを感じます」
人の「感覚」を扱う面白さもあります。
「感覚器は、この音がどう聞こえるか、このにおいがどんなにおいかというように、人がどう感じるかを学問する領域で、とても興味深いです」
子どもの頃から本を読むのも大好きで、現在も診療のかたわら、学会誌や雑誌などを読んでコツコツと勉強することを欠かしません。そこで得た知識や考察をもとに、新しいことを試そうと日々考えているそうです。

総合病院で緊急手術を数多く経験

大学病院や都立病院、総合病院で経験を積み、埼玉協同病院に赴任したのは2018年。所属している東京大学の医局から派遣される形でした。
聞けば、前職の大型総合病院では、外来も手術も、緊急手術も1人で担当していたとか。
「判断に迷う症例や、救急で手術が必要な症例も多い中、専門医は私だけ。年間500件もの通常手術のほか、緊急手術を30件から40件くらいやっていました。耳鼻科であること、1人で担当していたことを考えると、かなり多いと思います」
こうした経験を通じて、耳、鼻、のどに関わるさまざまな疾患や問題に対応できる幅広い知識と技術を体得したことが、埼玉協同病院のニーズと合致し、地域医療に貢献する大きな力となっています。

目の前の患者さんにベストな医療を提示する

埼玉協同病院は、医師や職員の士気が高く、やる気を感じると越智医師は話します。
「社会的な弱者にしっかり目を向けようという姿勢を強く感じます。問題を解決するには、社会全体が変わっていくことが必要。私自身は医者として、目の前に来た患者さんにベストな医療的解決法を提示することを頑張ろうと思っています」
常に念頭に置いているのは、地域医療に必要とされる医療を提供すること。
「そのためにも、患者さんが困っていることに対して、そのときに自分ができることをきちんとやりきることを大事にしています」
20年を超える経験から、冷静に判断し、地域の病院や専門病院と連携しながら地域医療を担っていく。まさにプロフェッショナルの安心感を感じさせるドクターです。

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