専門医シリーズ

子どもの心に親身に寄りそう
小児心理の専門家

専門医シリーズ16

藤田 泰幸 医師

プロフィール

1999年 筑波大学医学部卒業、2004年 埼玉協同病院勤務

日本小児科学会専門医、小児心身医学会認定医

小児心理の専門家として、子どもの心と向き合う藤田医師。本人や家族のケアはもちろん、教育機関とも連携を取り、奮闘する多忙な日々を送ります。そんな藤田医師の力になっているのが、「子どもの変化」だといいます。それを実感したエピソードや今後の目標などをお聞きしました。

埼玉協同病院での学び 小児科を極めたい

埼玉協同病院で唯一、小児心理を専門とする藤田医師。小児心理は「子どもの心療内科」と言われ、心の状態が影響してさまざまな症状として出現したりします。藤田医師はそうした症状や不安に悩む、中学生までの子どもを主に診察しています。
子ども関係の仕事に就きたいと、教師を目指した時期もありましたが、「学校の先生は向かないと思った」と方向転換。幼いころはよく風邪をひき、近所の診療所に世話になっていた経験から、小児科医を目指して筑波大学に進学しました。
卒業後、子どもから大人までを対象とする総合診療を学ぶため、同大学の6年間の総合医コースに進み、レジデントとして研修に取り組む日々を送ります。しかし、患者は圧倒的に高齢者の方が多く、子どもを診る機会はほとんどありませんでした。
「このままでいいのか、もっと小児医療を学びたい――」。そう悩み始めた時、総合医コースの最後の1年間を埼玉協同病院の小児科で過ごす機会に恵まれました。
「非常に充実していて、もっと勉強したいと思ったのを覚えています。でも1年間では小児科は極められません。それで、そのまま入職することにしたんです」。それが2004 年4 月のこと。「そこからずっと、この病院にいますね」と、藤田医師は当院との出会いを笑顔で振り返ります。

保護者や学校との連携も大切に

一般的に風邪をひくと3日程度で熱は下がり、快方に向かいます。しかし、微熱や腹痛が1 ~ 2 カ月続くような場合、あるいは学校のある日は具合が悪くなり、学校がないと体調が良いという場合などは、心身症を疑うといいます。その場合は家庭でのサポートも必要になります。
ひと昔前と比べて現在は医療情報があふれ、保護者が早めに子どものSOS に気づいて病院に連れてくることが増えていますが、保護者のケアも藤田医師は重視しています。子どもたちが治療を望んでいても、金銭的、距離的な問題などの家庭事情で、途中で通うことをやめる親御さんは少なくないといい、「親御さんの言うことが変わると、子どもが変わることが結構あるので、親御さんを支えることはすごく大事なことだと考えています」と藤田医師。そのため、子ども本人がカウンセラーと1 対1 で対面している間は、なるべく親御さんと話す時間を作り、じっくり向き合うようにしているそうです。
また、小学校や中学校などの教育機関との連携も不可欠です。教師と医師、多忙を極める双方の都合をつけることは簡単ではありませんが、藤田医師は近隣の学校の校医を務めていることもあり、学校側から「話がしたい」と連絡が来れば駆けつけます。「教師に子どもの不調の原因を追求してもらうわけではありませんが、学校が対応を変えてくれることでうまくいくケースもあるので、ここでもやはり対話を大事にしています」と藤田医師は語ります。

「子どもの変化」がやりがいになる

子どもの成長と自立をサポートする仕事。やりがいを感じるのは、「子どもの変化」だと藤田医師は言い切ります。「子どもって、やっぱり自分で治していく力がすごくあるんです。たとえば学校でのいじめがなくならないとしても、周りの大人が支えることで彼らは強くなり、乗り越えていける。周りが変わらなくても、自分は変われるんです」
実際に、藤田医師が長く担当している中学1年の生徒も大きな変化があったといいます。埼玉協同病院で産まれたその子は繊細で傷つきやすいタイプで家族も心配をしていましたが、カウンセリングでの長期的な見守りが功を奏し、現在は部活動に励み、逆にいじめられている他の子を助けるようになったそうです。
「親御さんも協力してくれて、本人の芯の部分を継続的に支えられたのが大きいと思っています」と藤田医師。本来、診療対象は中学生までですが、継続診療ということで高校生を診ることもあるそうです。「その子に対して自分がやってきたことが本当に良かったかどうかがわかるので、継続的に診られるのはすごく大事なんです。私のその願いに対して、病院やスタッフが柔軟に対応してくれるので、本当にありがたいですね」と、埼玉協同病院ならではの環境に感謝の言葉を口にします。
今後は、諸問題の解決に向けて家族からアプローチしていく「家族療法」を深めたい、と話します。「診療の際、あまり父親は病院に来ないんですが、もともと必要性を感じていました。父親を意識して話をしていくとうまくいくことが実は多いのです。だから、最近はそれを論理的に追究したいと思っています」。また、診療の一環として、外部と連携して学習障害の子に院内で勉強を教える新たな取り組みに監督として携わるなど、活動の幅を広げる藤田医師。
子どもたちやその家族の明るい未来のため、これからも寄り添っていくつもりです。

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