専門医シリーズ

患者さんが 納得できる治療を 実現するために

専門医シリーズ41

栗原 唯生

プロフィール

<認定資格>
博士(医学)
日本外科学会専門医・指導医
日本消化器外科学会専門医・指導医
日本内視鏡外科学会技術認定医(胆道)
日本肝臓学会専門医
日本胆道学会認定指導医
日本膵臓学会認定指導医
日本消化器内視鏡学会
消化器内視鏡専門医
日本がん治療認定機構
がん治療認定医
日本消化器外科学会
消化器がん外科治療認定医
日本肝胆膵外科学会評議員
<経歴>
2005年 東北大学医学部卒業
2005年 埼玉協同病院勤務
2012年 静岡県立静岡がんセンター
肝胆膵外科研修
2014年 埼玉協同病院勤務

外科部長として 外科を牽引する

6年前にも本シリーズに登場いただいた栗原医師。昨年4月からは埼玉協同病院の外科部長を務めています。
「外科医不足が社会問題になっています。10年後を見据えた人材の獲得と育成に力を入れています。幸い、当院には優秀でやる気のある若手医師が入職してくれています。彼らを一人前の外科医に育てることが、私たち世代の責任だと感じています」
野球に明け暮れた高校生のころ、スポーツドクターを目指したことが、医師を志すきっかけだったという栗原医師。今でも身体を動かすことが好きで、長時間の手術に備えた体力づくりも兼ねて、腕立て伏せやスクワットなどの筋トレやジョギングを続けています。大学時代には競技スキーに取り組み、今でもシーズンになるとゲレンデに足を運んでいます。
「冬はスキーが良い気分転換になります。トレーニングもスキーを楽しむための準備になっていますし、身体を動かすと頭の中が整理されて、気持ちの切り替えにもなるんです」と話します。

難しい 肝臓・胆道・膵臓の手術

歴史的に消化器系の手術に定評のある埼玉協同病院ですが、栗原医師が担当する肝臓・胆道・膵臓の手術は、その中でも特に難易度が高い分野です。
「駆け出しの頃は、頼ってくださる患者さんに十分に応えられない自分に、不甲斐なさを感じていました。特に肝臓の手術では、一つ腫瘍に対して、腫瘍の状態や肝機能によってさまざまな術式が考えられます。経験が浅いと、どの方法が最適なのか結論を出すことが難しい場合も多いのです」
この課題を克服するために、栗原医師は2年間、肝胆膵領域のがん治療で実績の多い静岡がんセンターで研鑽を積み、再び埼玉協同病院に戻ってきました。
「術前の準備をしっかりと行うことはもちろん、患者さんとよく話し合い、患者さんの希望をきちんと聞くことが、外科医にとって欠かせないと思います」
患者さんの希望に沿った治療ができるよう、栗原医師は患者さんとの対話を大切にしています。
 「がんの手術を受けることは、患者さんの寿命を左右する大きな決断です。患者さんが納得して自分の進む道を選ぶには、私たち医師が適切に情報提供を行ったうえで、専門家としての意見を伝え、ご本人の希望とすり合わせながら方針を決定していくことが重要だと思います」と話します。
こうした考えに至った背景には、術後まもなくがんが再発するなど、思ったような経過にならなかった患者さんを診てきた経験があります。万が一、治療経過が期待どおりに進まなかったとしても、患者さん自身が納得して選んだ道であれば、その状況を受け止めることができるのではないかと語ります。
「自分の人生ですから、患者さんご自身が納得して選ぶことが一番だと思います。肝臓がんには治療の選択肢が多く、また膵臓がんの手術では身体への負担が大きく、危険性の高い手術が必要になる場合もあります。だからこそ、患者さんとよく相談して治療を決めることが大切です」

住み慣れた地域で がん治療を

埼玉協同病院では、チームで患者さんを支える仕組みを整えています。
「キャンサーボードという相談の場があり、抗がん剤の専門医、がん専門の薬剤師や看護師などと話し合いながら、治療方針を検討しています。大学病院やがん専門病院のような最先端の治療や超高度な治療は難しい場合もありますが、生活背景まで考えて治療を行えることが、当院の強みだと思います。患者さんにとっては、住み慣れた地域で治療を受けられることが、大きな利点だと考えています」と栗原医師は話します。
患者さんが元気になる姿を見ることが、栗原医師のやりがいにつながっています。「定期健診(検診)は受けていますか?」と声をかけるなど、術後も患者さんが健康を維持できるように気を配っています。
近年、川口市でも緊急手術に対応できる病院が減り、手術が必要な状態で埼玉協同病院に搬送される患者さんが増えています。
「『協同病院で治療してもらえば間違いない』と言っていただけるような医療を提供し、この地域を支えていきたいです」

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